history

ウルトラファインバブルのシャワーヘッド
「アリアミスト ボリーナ」誕生秘話


シャワーヘッドは
使い分ける時代へ

毎日使うからこそ、
こだわるべき

ウルトラファインバブル

お風呂でシャワーを浴びるとき、水圧や節水が気になったことはないだろうか? 実はその現象はシャワーヘッドの交換で解決できる。多様化する時代のニーズに合わせ、シャワーヘッドも使い分ける時代へ。いわゆる「マイシャワーヘッド」の文化を創ろうとしている一人の男がいる。田中金属製作所の代表取締役、田中和広だ。

田中は「毎日使うシャワーだからこそ、こだわるべきだ」と話す。肌が気になるから肌当たりの柔らかいもの、サッと済ませたいから水圧の強いものなど、その日の調子や気分で選んでもいいのでは?――そう考えるようになったきっかけは田中の経験にある。「出張先のホテルのシャワーがどうも物足りない。」そう思った田中は、それから自社の製品を持ち歩き、ホテルで付け替えて快適なシャワーを浴びているという。

田中金属製作所は、ウルトラファインバブルのシャワーヘッド『アリアミスト ボリーナ』を開発。平成23年の発売以降人気商品となっており、今や国内に限らず海外からも引く手数多なこの商品で、業績不振から見事V字回復を果たした。しかし、それまで決して順風満帆であったわけではない。

始まりは現状を
打破したい想いから

美山 川

田中金属製作所のある岐阜県山県市は水栓バルブ発祥の地といわれている。大手水栓バルブメーカーの進出に伴って、下請けメーカーなどが次第に集まり、水栓金具で国内出荷額の約4割を占めるほどの一大拠点となった。同社もそのように誕生した水栓バルブ部品をつくる下請け業者のひとつであった。

しかし水栓業界は、住宅着工の低迷や競争激化で近年は厳しい状況にある。田中金属製作所は、部品加工を請け負っていた主要取引先メーカーが平成20年に事業撤退したのを機に、シャワーヘッドなど自社商品の開発に力を入れてきた。そして生まれたのが節水シャワーヘッド『アリアミスト』だ。

下請けから
メーカーへの第一歩

工場

あるとき田中は、ある会社から「水道料金を削減したい」と相談を受けて、節水器具がかなり高額で流通していたことを知った。「性能の良い節水器具を適正価格で売り出せば、必ず売れるはず」。そう考えて節水事業をスタート。平成15年にはシャワーヘッドに取り付ける特殊なアダプターを開発した。これまでの下請け仕事とは違った自社商品につながるひとつの試みであった。

アダプターを企業展に出店すると、東急ハンズから「一般家庭向けにも販売できないか」と提案があった。そこでアダプターをシャワーヘッドに組み込んだ節水シャワーヘッド『アリアミスト』を平成17年5月に販売開始。これで一気に需要が増えるだろうと田中は見込んでいたが、ほとんど売れなかった。

シャワーヘッド

しかし、ここで転機が訪れる。平成19年、ご縁があり出店したテレビショッピングで、本来の性能が評価されて爆発的なヒットに。1日に1万5000本が売れたこともという。その売れ行きから、田中は「『売上10億を目指す』と宣言するほど調子に乗っていた」と笑う。
良い時期は長く続かないもので、長年取引してきた水栓メーカーの内製化によって仕事が激減。追い討ちをかけるように、ベンダーの失態から、平成21年には商品を納入できなくなってしまう。売り上げは10分の1にまで落ち込んでいった。いわゆる崖っぷちである。債務超過は8,000万円にのぼり、いつ倒産してもおかしくない状況に陥ったのだ。さらに翌年には開発部の課長が退職。田中は技術者までも失い、「八方ふさがり」の状態になっていた。

千歳一隅の縁、そして決意

アリアミストボリーナ

ここでまたも転機に恵まれる。平成22年の年始に、廃業した水栓メーカーにいた開発者から1通のメールが届いたのだ。

差出人にピンときて直接電話をすると「田中金属製作所で働けないか」というのだ。
安定した企業に就職できる技術を持っているのにも関わらず、ボーナスも出せない田中金属製作所で働きたいと入社を希望していることに、田中は驚きを隠せなかった。

彼の活躍によって無事に要素技術の改良に成功。そうしてウルトラファインバブルシャワー『アリアミスト ボリーナ』の商品化にこぎ着けた。
田中は、この商品で何が何でも会社の業績を上げようと決意する。

ここでこの商品について触れておこう。『アリアミスト ボリーナ』は、水分中の空気を利用してウルトラファインバブルを生成する発生装置を組み込んだシャワーヘッドのことである。ヘッドから流れるウルトラファインバブルは直径0.1μm(マイクロメートル)と極小。50μmのマイクロバブルの浮遊速度が秒速1.3㎜であるのに対してウルトラファインバブルはほとんど浮上せず、1年程も泡のまま水中にとどまるのが特徴だ。毛穴やシワの奥へ入り込み、皮脂や汚れを吸着。美容や洗浄作用に加え、節水や温浴作用も期待できるという。さらに田中は「空気を多く含んでいるため柔らかい水になる」とも話す。また開発したウルトラファインバブル発生装置「μ-Jet(ミュージェット)」は特許も取得。内部の特殊構造により、蛇口から流れ込んだ水が渦状になって「台風の目」のような空間を作り出す。その空間に水流の圧力や速度の変化が加わり、極小の泡を発生させる仕組みだ。通常は気体の送り込みや圧力変化などに大掛かりな装置が必要で通常数万~数十万円程度するが、「μ-Jet」は水栓部品の製造で培った流水制御や切削加工の技術を活用することで、小型かつ価格も安価に抑えた。

あきらめない心が結実

実演販売

そんな技術の結晶ともいえる画期的なシャワーヘッド『アリアミスト ボリーナ』だが、販売当初から好調に売れたわけではなかった。ウルトラファインバブルを搭載した他社のシャワーヘッドは15,000円ほどで販売されていたため、10,000円を切る価格ならば売れるだろうと、田中は『アリアミスト ボリーナ』を当時9,800円で販売。それでも高いといわれ、当初はほとんど扱ってもらえなかった。

そんな時、お世話になっている東急ハンズのバイヤーから、完売王と異名をとる販売のプロを紹介していただく。それがきっかけで自らも実演販売することを決意。そんな挑戦、上手くいくはずがないと誰もが反対したが、田中の持論は「たとえ良い製品を作ってもそれが踊るステージがなければ知られることはなく、作り手の自己満足で終わる。ステージを作ることが大事」ということ。田中に迷いはなかった。

実際に平成24年12月に東急ハンズ銀座店で実演販売をスタートしたところ、何と1日で30本を販売。それが評価されて田中は毎週末東京へ通うことに。そして必死に、地道に続けた実演販売が評判を呼び、各店舗から依頼が殺到するとともに、取り扱い店舗もみるみる増加。そしてさらに思わぬ奇跡を起こす。経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』への出演依頼が届いたのだ。

番組の放送終了後、同社のシャワーヘッドは一気に注目を浴びる。売上は前年の2億5000万円から4億4000万円へと増加。経常利益は1.4%からなんと25.6%へと飛躍的に成長したのだ。

ウルトラファインバブルの未来

OEM

そして現在、田中は顧客開拓を深耕中だ。
シャワーヘッド『ボリーナ』の本体カラー変更やレーザーマーキング加工に対応し、企業や販売店、美容室などを対象に特別仕様の限定デザインを提案。販促品や店舗限定としての利用販売を見込む。

また他の業界にも目を向け、ウルトラファインバブルを使った水耕栽培での育成促進効果実験を実施。同社の機器で発生させたウルトラファインバブルを含んだ水で、かいわれ大根を水耕栽培した結果、通常の水道水に比べて最大4倍ほど根が長くなったという。

このようにさまざまな分野でウルトラファインバブル技術を使った製品の開発や、技術を応用した新しい事業の模索も行っている。この技術をもって、海外進出も視野に入れているという。

田中社長

『ガイアの夜明け』ではシンガポールのホテルでの提案だったが、他にも中国や台湾、韓国など、各国で注目されている。貴重な資源である水を大切に使うために節水は必須。そんな国々へ、田中金属製作所が培った節水技術を役立たせていきたいと考えている。

翻って、日本ではどうか。すでに販売されているウルトラファインバブルのシャワーヘッドを一般家庭に浸透させることが田中の1番の願いである。毛穴の汚れも除去できるウルトラファインバブルは、美容に関心のある女性はもちろん、毛髪も健康になり抜け毛予防にもなるなど、老若男女を問わず手にしたい製品ではないだろうか。

現在のシャワーヘッド、水圧の強いもの、そしてアリアミスト ボリーナと、その日の調子や気分でシャワーヘッドを使い分ける時代が、もう目の前に迫っているのかもしれない。

ウルトラファインバブルについて

田中金属製作所


058-248-5822

お客様お問い合わせセンター
サポート時間 10:00〜12:00、13:00〜17:00 ※月曜〜金曜(祝日は除く)

本店美山工場
〒501-2253
岐阜県山県市日永1095番地
本    社
〒500-8154
岐阜県岐阜市木ノ下町2丁目4番地 TKS BLDG.

Makuake クラウドファンディングに挑戦中