製品開発ストーリー「ボリーナ オースリーミスト」

o3mist
30秒で⽔道⽔を除菌消臭⽤オゾン⽔に変える携帯除菌器

ボリーナ オースリーミスト

製品概要
⽔だけで除菌・消臭できるウルトラファインバブルオゾン⽔⽣成器「ボリーナ オースリーミスト」。世界最⼩クラスのサイズで携帯性抜群な上、「⽔」を電気分解して⽣成する⽅法のため⼈体に無害な点が特徴です。オゾンを水中に高密度に閉じ込めるためにウルトラファインバブルの技術を活用しました。7年におよぶ研究の末実現した安⼼安全の⽇本製です。2020年10月発売。
オゾン⽔とは:酸素の同位体であるオゾンが溶け込んだ⽔のこと。オゾンは酸化する⼒と除菌、有機物分解の作⽤があるとされる物質で、強い除菌性能も認められています。残留性がない⻑所の⼀⽅で、長時間の保存できません。 本製品では使用する直前にオゾン水を発生させる仕組みです。

製品開発ストーリー

製品開発ストーリー「ボリーナ オースリーミスト」

美容だけではない、
ウルトラファインバブルの可能性

 ウルトラファインバブル発生機構「μ-Jet機構(ミュージェット)」についてプレスリリースを配信したところ「ウルトラファインバブルを生成し、オゾン水の殺菌力の持続時間を延長できないか」という相談が医療機器商社から寄せられました。2011年のことです。

当時も現在も、医療現場の手指洗浄には主にアルコールが使用されています。殺菌力と即効性がある一方で皮膚刺激が強くキズや粘膜に適さないこと、ランニングコストの高さ、環境負荷について改善を希望する意見があったのも事実です。

もし殺菌力が高く残留性のないオゾン水を利用できれば、アルコールの購入費を削減し、流通や保管などのさまざまな面でコスト削減に寄与し、環境負荷まで低減できるかもしれない……。私たちだけでは考えもつかなかった、ウルトラファインバブルの可能性に気づかされた瞬間でした。

μ-Jet機構:高速旋回液流とキャビテーションによる独自の発生方式

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ウルトラファインバブルが
医療の未来を変える?

オゾン水は低刺激ながらも効果が高く、抵抗力を持つ菌が生じない(耐性菌を作らない)といった数多くの利点があります。では、これまでになぜオゾン水が使用されてこなかったのか?その答えは、「残留性のなさ」です。
アルコール製剤は、開封後も長期間効力を維持しますが、オゾン水は生成からわずか30分で効力が半減。最終的にはただの水になってしまいます。

そうしたデメリットを解決する手段として白羽の矢を立てられたのが、当社のウルトラファインバブル発生機構「μ-Jet機構(ミュージェット)」でした。「オゾン水にウルトラファインバブルを混ぜれば、半減期を延長できるのではないか」という仮定のもと研究プロジェクトがスタート。医療機器商社をはじめ、関東の医科大学、大学教授や附属の大学病院の院長もプロジェクトに加わり、2013年に具体的な取り組みが本格的に始まりました。

製品開発ストーリー「ボリーナ オースリーミスト」

24時間の濃度持続は未達成、
乗り越えられない高い壁。

オゾン水の製造には、「ガス溶解法」と「電気分解法」の2種類があります。このプロジェクトでは「ガス溶解法」を採用しました。病院内のオゾンガス発生器といった既存設備を活用するという発想が基盤にあったからです。さらにオゾンガスを原水に溶かす方法として、当社が得意とするエジェクター方式をアレンジした方法を選択。オゾンガスを含んだファインバブル水の生成を目標に試作を繰り返しました。

望んだような半減期を持続できるかどうかを検証するために欠かせない、経時的な殺菌効果と濃度の測定は医科大学の協力を要請。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を指標菌として使用し、オゾン水、通常のファインバブル水、そしてオゾンとウルトラファインバブル水の3種類をひたすら測定しました。
残念ながら望んでいた24時間の濃度持続は未達成でしたが、医科大学の教授により「①マイクロバブルにオゾンが溶解した結果、オゾンが保持されたのではないか。②オゾンとマイクロバブルの両方から発生したフリーラジカルにより、強い殺菌効果を得たと考えられた」との考察を得ることに成功。
今後の課題が明確になったところで、一旦この研究は終了しました。2014年のことです。

製品開発ストーリー「ボリーナ オースリーミスト」

オゾン水の抗酸化力解明の
鍵を握る、フリーラジカル。

ウルトラファインバブルの効果について、別の視点からの研究が必要との判断から、2014年以降は地元の岐阜大学を中心とした共同研究を開始。以前の研究で示唆された、「オゾンとマイクロバブルの両方から発生したフリーラジカルにより、強い殺菌効果を得たと考えられる」という考察に焦点を当て、飲用時に生じる可能性のあるギャップについての調査をメインテーマにしました。特定保健用食品の飲料にあるような食後血糖値への影響について、岐阜大学の久保教授が具体的な研究をスタート。当社は、ウルトラファインバブル水を生成するユニットを提供するために研究参加しました。その結果として、ウルトラファインバブルを含んだ水は、肥満マウスでは食後の血糖値を抑制することを確認。ウルトラファインバブル水の抗酸化力ではないかと推論されました。それらを確認するため、共同研究の場は農業分野にも広がっていくことに。
さらに医療分野から農業分野へと共同研究の場が移行するタイミングで、東京理科大学(当時)の横山峰幸先生との出会いが、また次のステージへと進む大きなきっかけとなったのです。

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農業でのウルトラファインバブル探索と
先生方との出会い。

横山先生を迎えて、ウルトラファインバブルの農業分野での探索をスタート。横山先生は東京理科大学の研究室を拠点に、まずは「植物の連作障害を軽減するウルトラファインバブル水の効果」をテーマに学会で発表されました。さらに具体的な病害土壌でのウルトラファインバブル水の効果を検証するため、横山先生は拠点を東京農工大学へ。
研究を進める中で、ウルトラファインバブル水中のヒドロキシラジカル(活性酸素の一種)を測定することに成功しました。活性酸素にはヒドロキシラジカルのほかにも4種類あります。その中でヒドロキシラジカルはもっとも反応性が高く、強力な酸化力を持つとされています。この物質は生成後すぐに消滅するため、長時間存在しません。ボリーナオースリーミストに含まれるオゾン水ミストには、このヒドロキシラジカルが豊富に含まれています。

その後も当社として、ガス溶解法により生成されるオゾン水をウルトラファインバブル化し、保存期間を延長する取り組みを北陸に拠点を持つ研究開発会社とともに続けました。結果、保存期間延長に一部成功したものの、24時間という目標には到達できないままだったのです。

そこでオゾン水を生成する方法についても再度検討し、電気分解法に大きく舵をきることになりました。 

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柏崎ユーエステックとの出会いが
プロジェクトの推進力に

電気分解法の利点は、装置の小型化の実現です。機器の構成も、ポンプやタンクが不要なため、全体的にコンパクトになります。これは病院に常備しているオゾンガスを使用するという前提からの転換でした。それぞれの方式には生成量などで一長一短ありますが、私たちの目標は「効率的にオゾン水をウルトラファインバブル化する」こと。当社に所属する開発者の新たなチャレンジが始まりました。

この段階では、病院で使用されるディスペンサータイプの機器開発を想定。電気分解方式で生成したオゾン水を小型ポンプで加圧し、ノズルでウルトラファインバブル化する構想を立てていたのです。しかし、既存メーカーの製品ではなかなか満足のいく性能が得られず、機器に最適な電極探しに日本中を奔走する中、柏崎ユーエステック株式会社(本社:新潟県柏崎市)と運命的に出会いました。

同社はオゾン水生成器や還元水素水生成器など、この分野で長年にわたってトップメーカーとして活躍し、日本医療・環境オゾン学会の法人会員として、オゾン水の活用に関する研究を行ってきた企業です。
この出会いがボリーナオースリーミスト誕生に至る、もっとも重要な鍵となりました。

製品開発ストーリー「ボリーナ オースリーミスト」

多くのエビデンスで証明する、
ボリーナ オースリーミストの魅力

私たちが取り組むオゾン水の電気分解方式の研究について、柏崎ユーエステック株式会社に相談した結果、この分野におけるプロフェッショナルとして惜しみないアドバイスと協力をいただきました。

さらに研究を加速させる中で、電気分解方式で生成されたオゾン水は、同時にオゾンのファインバブルも生成していることを発見。オゾン水中のファインバブル相当のバブルは、スプレーノズルを押さえると、内部のオゾン水原水を加圧。容器内の微量なオゾンガスを瞬時に溶解させながら、スプレーと同時に一気に開放すると効率的にウルトラファインバブルが生成されていると判明したため、製品には「加圧溶解式」の採用も決定しました。

こうしたさまざまなプロセスを経ながら「オゾン水の長期保存」というテーマに取り組む中で、使用分だけその場で生成する携帯型のデバイス開発を最終決定。その後、柏崎ユーエステック株式会社とセッションを重ね、原理試作が完成したのは2019年の夏です。

菌などの不活化に関するデータはもちろん、ウルトラファインバブル化ならではの利点を追求するためにヒドロキシラジカルの測定などエビデンスを積み重ねました。そして2020年。コロナ禍の中、ボリーナ オースリーミストが発売されたのです。

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TKSが考えるオゾンガスの
ウルトラファインバブル化の未来

永年の課題であるオゾンガスのウルトラファインバブル化については、今なお継続して取り組んでいます。農業分野から特殊な空間での殺菌処理など、幅広い分野で応用が見込まれるためです。

ウルトラファインバブル化したオゾンについては、消耗品が不要であることや残留性に優れ、耐性菌も生じないことから、今後さらに注目されると考えられます。これらを成立させるノズルや機器の開発こそ、24時間365日いつでも安心して使用できる世界の実現に繋がります。そのためには地道な研究開発が不可欠です。これからのTKSにご期待ください。

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